ナラ枯れは、カシノナガキクイムシという甲虫がナラ菌を媒介して伝播します。甲虫のマスアタックがあると、樹体内では菌の感染に反応して、木部内に集積する抗菌性のタンニンなどの二次代謝産物が集積することや、道管がチロースという充填物質で塞がれるという現象が起こり、通水が阻害されます。そのとき、多量に生産された抗菌物質が、機能している当年生の道管まで塞いでしまい、木が萎凋して、その結果枯死に至ります。

また、日本の土壌はそもそも緩衝能が高く、酸性雨も中和する力があると言われてきましたが、近年の環境中の窒素過多の進行により、その緩衝能もかなり低下してきていると言われてです。

土壌が酸性化すると、マグネシウム、カルシウム、カリウムなどの植物の生長に不可欠な栄養塩類が流亡してしまい、樹木も草も、さらには農作物、それを食べる人間、動物に影響してきます。

木炭は、カーボンだけではなく、木が生きていくうえで必要な栄養塩類をそのまま閉じ込めているものです。その木炭を粉にして吸水根の先端にあたるように埋設すると、根の栄養塩類を吸収する機能が作用し、木全体の栄養不足を補うことが出来ます。粉炭を撒いた木は、3~4年はカシノナガキクイムシのマスアタックを免れることが私たちの実績で示されました。炭の効果で樹木が健康になれば、ナラ枯れにある程度抵抗できるようになるのではないかと考えられます。

そのような効果により、ナラ枯れを防ぐことが出来るだけでなく、そのほかの栄養不足を起因とする樹病や樹勢の衰退を回復させることができると我々は考えています。